38歳女性。
海外で、語学学校に勤務しています。
国籍日本、DNA日本人、母語日本語。
ただ、人生の大半を海外で過ごしていた。
数年に1回の割合で滞在した日本での生活で、遺伝子や言語だけでは足りない、なにかを発見。
趣味は読書で、「日本ほど、本が手に入りやすい国はない」と思っている。
見出し
「日本人として足りない?」と思ったもの1.基本中の基本知識
日本での生活より、海外生活のほうが圧倒的に長かった私が、久々の日本で、はじめてアルバイトをしたときのことです。
選んだバイト先は、コンビニの早朝シフトでした。
最初の1日は、店長が仕事の流れをつきっきりで説明してくれましたが、2日目からは、私1人のシフトに。
小さなコンビニだったんですね。
仕事の流れはしっかりメモをとり、「失敗しないように」と繰り返し確認しながら、2日目を迎えました。
メモで対応できないトラブルもなく、一通りの仕事をこなし、あと少しでバイト修了時間になったときのこと。
一人のお客様から質問されました。
「○○(商品名)はどこ?」「○○ですか?」と答えはしたものの、頭のなかはパニック状態。
「『○○』とは、食べ物でしょうか? 飲み物でしょうか? 生活用品でしょうか?」
目を泳がせる私に、怪訝そうにそれを見つめるお客様……。
そこにやってきた、シフト交代の先輩の姿に、後光が見えたのです。
交代後に、コンビニ中の商品名をチェックしまくったのは、今でもいい思い出ですね。
また、違う折にお客様に道を尋ねられ、「○○遺跡の近くで~」と言われたときのこと。
「この近くに遺跡があるんですか、すごいですね」と返事をしました。
すると、「え、それ学校の教科書でやる有名なやつだよ?」と驚かれたことがあったのです。
幸い、クレームをもらうような大きなミスをせず、はじめてのアルバイトを終えることができました。
しかし、すごく可愛そうな子を見守るお客様の視線が、いたたまれない日々でしたね。
コンビニの仕事の流れを覚える以前に、もっと基本的なものを覚えておく必要があったようです。
心の広かったお客様方に、今も感謝しています。
「日本人として足りない?」と思ったもの2.言語以外のコミュニケーション能力
アルバイトをすると、目上の方から、いろいろと注意を受けることがありますよね。
私も、やはりありました。
でも、それは自分のためを思って、注意してくれていることですよね。
なので、真剣に聞きました。
自分に、もっともなじみのある形で。
店長が説明してくれたことに対して、「はい、はい、はい」と、「はい」を一生懸命繰り返してしまった私。
「私は、あなたの言っていることを真剣に聞いて受け止めています」というアピールでした。
もう、お分かりかと思いますが、店長からは「『はい』は一回!!」と、更なる注意を受けたのです。
また、駅前での待ち合わせのときもそう。
向こうからやってきた知り合いの方に、「急いで、急いで」と、自分にもっともなじみのある、ボディランゲージで合図を送ったことがあります。
しかし、その際に「なにへんな動きしてるの? 手が痛いの?」と聞かれたのです。
いきなり顔の前で手首から先をプルプルと振りだした私は、はたから見ると、動きの怪しい不審者だったようで……。
たった一つの動作で、注意を受けたり、怪しい人認定をされてしまう事実に、おそれおののきました。
なにがトラブルのもとになるか、分からないものです。
「同じ言語で話せることだけが、コミュニケーションではない」ということですね。
「人と接する自分を、客観的に見つめる必要がある」ということが分かりました。
無意識に迷惑をかけてしまった周囲の方たちには、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
「日本人として足りない?」と思ったもの3.ここは日本という常識
私は東洋人が少ない地域で、長年生活をしてきました。
しかし、少ないからこそ、東洋人のコミュニティー意識が強い地域でもあったのです。
物心ついて以来、はじめて日本に降り立ったときに思ったことは、「日本人がたくさんいる!」でした。
右も左も、黒髪黒目の日本人。
そして、はじめて「自分が集団のなかで、目立たない」という体験をしましたね。
東洋人の少ない地域に住んでいると、黒髪黒目日本人顔の私は、とても目立ちました。
60人という大人数のクラスでも、私が授業を休むと、先生が教室に入るなり、「あの日本人の子はどうした?」と言うほど。
私をあらわす形容詞は「かわいい子」でも、「太った子」でもなく、「日本人の子」でした。
でも、東洋人が目立つ地域にいたということは、自分以外の東洋人の姿も目立つということです。
そして、コミュニティー意識が強い地域であれば、最低でも会釈といった挨拶は、同じ東洋人には必須でした。
そして、これは思いのほか、身に沁みつくもので……。
日本人があふれる日本をはじめて歩いた私は、すれ違う見ず知らずの人たち一人ずつに、会釈をし続けてしまったのです。
条件反射で、刷り込まれていたんですね。
気がついたとき、愕然としました。
必要がないのに、つい会釈をしてしまう自分がとても恥ずかしくて、今でも忘れられません。
「ここは日本、ここは日本」と、目の前の常識をきちんと設定しなおす必要があった私。
私とすれ違ったことで、困惑された方々、ご迷惑をおかけしました。
まとめ
「国籍日本、DNA日本人、母語日本語、日本で生活するのに、問題はなにもなし!」
そう考えていましたが、円滑な生活を送るためには、それだけでは足りなかったようです。
子どもを連れて、海外で長期間の滞在を予定している方は、帰国後、ちょっとお子さんの様子を気にかけてみると、いいかもしれないですね。