バンドマンの私がシングルマザーと結婚したエピソード4編

家族

35歳男性。マンション管理関係会社勤務。5年前に、当時の勤務先であったコンビニで知り合ったシングルマザーと結婚。子どもは、実子の長男と妻の連れ子である長女。趣味はバンド活動で、現在も社会人バンドとして活動中。

 

 

シングルマザーと結婚したエピソード1.シングルマザーゆえの負い目を超えて

コンビニ

 

私が、店長として配属されたコンビニでアルバイトをしていたのが、のちの妻でした。

明るくて、とてもかわいらしい子でした。

 

しかし、このときは結婚することはおろか、交際することすら考えていませんでした。

なぜなら、彼女はシングルマザーで、当時4歳になる娘がいたからです。

 

娘も、おばあちゃんに連れられて、たびたび店に顔を出していました。

ですので、そのときから知っていました。

 

娘さんも私を認識していて、私のことを見つけると「店長さん」と、呼んでくれていました。

一緒に働くのはとても楽しく、好意はありました。

 

あとから聞いた話では、妻もこのときから、私のことを意識していたそうです。

しかし、シングルマザーというのが、お互いに壁となっていて、「店長とアルバイト」の域を出ることはありませんでした。

 

やがて、彼女は正社員として他社への就職が決まり、コンビニを辞めていきました。

それから1年ほどは、お互いに連絡を取り合うということもなくいました。

 

ある日、彼女がふいに私の店にやってきたのです。

そして、私に相談にのってほしいと言うのです。

 

早速、その日の夜、仕事をおえてから、彼女の家に向かいました。

車に乗り込んだ彼女は、今の職場の不満や愚痴を言っていて、私はひたすらそれを聞いていました。

 

その日以来、仕事おわりに社内で彼女と会う日々がはじまりました。

娘を寝かしつけおわるのと、私が上がる時間がちょうど良かったこともあって、その頻度は少しずつ増えていきました。

 

いつしか、それが私の楽しみになっていました。

彼女のほうから、私への好意を伝えられました。

 

「バツイチ、子持ちだから、交際を申し込む勇気がない」とも、言われました。

そんな彼女をとても愛おしく感じた私は、自分から彼女に交際を申し込んだのです。

 

当然、結婚を前提として。

彼女は、泣いて喜んでくれました。

 

こうして、シングルマザーである彼女との交際がはじまりました。

 

シングルマザーと結婚したエピソード2.制限だらけのデートを乗り越えて

子連れ

 

彼女とのデートは、もっぱら夜の車中でした。

平日の日中は、お互い仕事があるし、休日は保育園も休みで、彼女は娘の世話をしなければなりません。

 

そのため、会うのは娘が眠ってからですし、家に上がりこむわけにはいかなので、デートは車中となったのです。

それこそ、私は毎晩、夜になると彼女を迎えに行きました。

 

夜中まで、ドライブをしながら語り合うのが日課でした。

なんだか、こっそり会っているような背徳感もあって、それはそれで悪くはありませんでした。

 

とはいえ、「昼間からゆっくりデートしたい」という欲求は、徐々に増していきました。

彼女の口からも、そういったことを匂わせる発言が、目立つようになりました。

 

そして、ついに休日に日中デートを敢行することになったのです。

しかし、問題となるのは娘です。

 

まさか、3歳の幼児を一日ひとりで留守番などさせられるわけがありません。

おばあちゃんに頼むにしても、そんな理由で一日押し付けるというのも、気が引けます。

 

私は、彼女に「三人で、でかけよう」と、言いました。

彼女は、それをとても喜んでくれました。

 

本当は、彼女も三人で出かけることを考えていたようです。

しかし、私が嫌がるのではないかと、言い出せなかったとのことでした。

 

いよいよ、デート当日になりました。

私が車で迎えに行くと、娘は照れていて、彼女のうしろに隠れてしまって、なかなか顔を見せてくれません。

 

そんな状況で、デートはスタートしました。

私が運転席で、ふたりは後部座席に乗りました。

 

通常のデートであれば、彼女が助手席に乗るところですが、娘がいてはそうはいきません。

チャイルドシートをセットして、その横に彼女が座りました。

 

初デートの行き先は、動物園でした。

ふたりであれば、また違ったデートスポットを選んでいたと思います。

 

でも、娘のことも考えての選択でした。

三人で手をつないで園内を散策する姿は、周囲から見たら家族にしか見えなかったでしょう。

 

私も、とても自然な気持ちでいられました。

デートの帰り道、私は彼女にプロポーズしました。

 

彼女も娘も、照れながらも快諾してくれました。

 

 

シングルマザーと結婚したエピソード3.三人の結婚式と新婚生活

結婚式

 

結婚式は、近親者だけを集めて、地味に行うことにしました。

妻にとっては、二度目の結婚式であったことも、考慮してのことでした。

 

プランナーと式の内容を決めていく際に、ひとつの提案をしました。

娘も含めて、三人が家族になる儀式として、行いたいということでした。

 

私たちだけの式として行ったら、娘が疎外感を感じたり、母親を奪われたと感じたりするかもしれないからです。

この結婚式は、大変好評でとくに妻側の親類は、大変安心したようでした。

 

近年、私たちのような夫婦の子どもが虐待されるニュースが増えています。

私も少なからず、その可能性を危惧されていたのでしょう。

 

もちろん、そういったことが、一切ないことを証明したというわけではありません。

しかし、「三人の門出を心から祝福してくれる、親類を裏切ることは絶対にできない」と、改めて思いました。

 

新居での、生活がはじまりました。

私は、娘にとって本当の父親になりたいと、考えていました。

 

それが、妻に対しての最大の愛情表現であるからです。

そのためには、本当の父親以上に、父親らしくする必要がありました。

 

しかし当の娘は、結婚したことで、私に対して照れがあったのか、あまりなついてくれませんでした。

こちらが、歩み寄ろうとすればするほど、私との接触を拒むようによそよそしくするのです。

 

妻が、なんとかあいだに入ってくれていましたが、彼女も焦っていたのでしょう。
ある日、一緒に遊ぼうとする私を嫌がって逃げ出した娘を、妻が激しく怒鳴りつけたのです。

 

私が「仕方ないよ」と、なだめても、妻の怒りは収まりませんでした。

泣きわめく娘を激しく叱責し続け、ついには自身も泣き出してしまったのでした。

 

やはり、妻にとって娘の存在が負い目となっていたのでしょう。

私を拒絶する娘の態度が、私に対して申しわけないという、妻の気持ちを増長させてしまったのです。

 

娘からしたら、私は赤の他人です。

父親と認識しろというのは、無理があったのでしょう。

 

もしかしたら、一生受け入れてもらえないかもしれません。

私と妻も、それはある程度、覚悟してはいました。

 

少しずつ、距離を縮めていくしかないのです。

娘の戸籍は変えられても、気持ちまでは変えられません。

 

ただ、本当の父親として認めてもらうために、少しずつ歩み寄るしかなかったのです。

万が一、娘との関係に嫌気が差して、私が感情的になっては、すべてがだいなしです。

 

私には、根気と覚悟が必要でした。

 

シングルマザーと結婚したエピソード4.本当の家族へ

あかちゃん

 

私と娘の関係は、つかず離れずの状態が続いていました。

妻は、そんな状態にやきもきしていましたが、私が「大丈夫、ゆっくり家族になろう」と、なだめる日々でした。

 

結婚から一年、妻が男の子を妊娠しました。

私たちは当然、喜びましたが、同時に新たな不安も生まれました。

 

娘の心情がどうか、ということです。

これまでは、ある意味、私が部外者でした。

 

しかし、息子が生まれることで、娘自身が部外者となってしまうのではないか。

無意識に、私たちがそう感じさせる態度を取ってしまうのではないか。

 

私にとって、実子である息子と娘を、同じように愛せるのか。

7歳になって、小学一年生になった娘も、不安を感じていたと思います。

 

それから、さらに数ヶ月、息子が誕生し、私たちは四人家族となりました。

娘は、相変わらず私との距離を縮めようとしてくれませんでした。

 

それどころか、露骨に嫌悪感を表すようにさえなっていました。

妻が、そんな娘の態度を説教をしたときに、娘が「ほっといてよ、どうせ私だけが他人なんだから」と、言いました。

 

妻は、これまでの努力、すべて否定するかのような娘の発言を聞いて、ひどく悲しみ、泣き崩れてしまいました。

「いい加減にしなさい。パパたちはお前を他人だなんて思ったことはない」と、はじめて私は怒りました。

 

私の気持ちが伝わったのか、娘は号泣しながら謝りました。

私は黙って娘を抱きしめ、頭をなでました。

 

妻も抱き寄せ、三人で抱き合いました。

娘は、私が自分に対して、必要以上に気をつかっていると感じていたようでした。

 

そのため、どうしても他人にしか思えなかったそうです。

しかし、本気で叱られたことで、つくり物ではない、本物の愛情を私から感じたようでした。

 

私は深く反省しました。

娘との距離を近づけようと、気をつかっていたことが、娘にとっては逆に障害となっていたのでした。

 

こうして、私たちは本当の家族となったのです。

 

まとめ

シングルマザーとの交際には、さまざまな制約があります。

それを乗り越えて結婚となったら、同時に親になるという覚悟が必要となります。

 

シングルマザーとの結婚は、簡単ではないですが、自分を大きく成長させてくれました。