29歳女性。
個人事業主(クラウドワーカー)。
物心ついたころから、数々のいじめや裏切りにあい、死を考えるほど、追い詰められる。
しかし、ドマイナーV系バンドにハマったことや、SNSで人気者になったことから、承認欲求を満たされ、人生に希望を見出しはじめます。
見出し
苦痛な人生でも、私が生きようと思った理由1.人と顔を合わせずに、お金を稼ぐ方法を見つけた
私は、「フランケンシュタイン」という話しに出てくる怪物のように、顔が大きくて、顎がとてもゴツく、そして長いのです。
女版篠原信一さんだと、想像してください。
そんな私は、今まで生きてきたなかで、一度も「可愛い」なんて言葉をかけられたことがありません。
「顎ブス」や「しゃくれワキガ」……。
そういったネガティブな悪口しか言われた経験がなく、それが本当に苦痛でした。
いろいろないじめをされましたが、一番嫌だったのが言葉の暴力です。
授業中ごく普通に黒板を見ているだけなのに、前の席のクラスメイトがこっちを振り返って、「見るなよ、顎ブス。背中が腐る」と言われる私。
目をそらすと、今度はその先にいた生徒が、「こっち見んじゃねえよ」と言います。
あの人たちに、「黒板を見ている」なんて言葉は通用しません。
ただ、鬱憤を晴らせれば、それでいいのです。
授業中にそんなことを言う生徒がいたとしても、教師はなにも注意しませんから、やりたい放題でした。
高校を卒業して、アルバイトをはじめるときも、なかなか採用されません。
コンビニの面接で店長から、「見た目が、ちょっと接客業に向いてないかな」と、言われたことがあります。
私なりに「キモい」と言われないようにと、髪も綺麗にしたり、メイクで肌荒れを隠したりなど、努力したのです。
服装も清潔感のあるものを着ていました。
「臭い」と言われ続けたトラウマから、体臭ケアには余念がありません。
しかし、それでも皆、私を見た目で判断するのです。
そればかりか、「私なんかに気をつかう必要はない」とでもいうように、直接、ひどい言葉を投げかけます。
やっと採用されたバイトは接客ではありませんが、同僚たちにいつも見た目で差別され、いじめを受けました。
頑張っても、「ブスだから、仕事もトロい」と言われるのは、本当に辛いことです。
「こんな顔に生まれなければ、もっと楽にバイトが決まるのに」
「見た目で、私を決めつけてくる人なんて、いなくなるのに」
「いっそ死んで、今度こそ、綺麗な顔に生まれ変わりたい」
そんなことばかり、願っていたのです。
しかし、私は誰とも合わずに、お金を稼ぐ方法を見つけました。
それがクラウドソーシングです。
ランサーズやクラウドワークスなど、世のなかにはいろんなクラウドワーカーの働き場所があります。
ほかにも、動画を見てポイントを稼ぐお小遣いサイトや、ブログを書いて、広告を稼ぐ方法など……。
ちょっと挙げるだけで、いくつもの「誰にも顔を見られないで、私を評価してくれる場所」があるのです。
「顔で、『こいつは仕事ができそうにない』と判断されるならば、顔を隠して、仕事をしてやろう」
そう思った私。
最初はなかなか思うように稼げず、大変でした。
ですが、今は、安定した収入を得られるまでに。
私は、私の能力だけを適正に評価してくれる場所を見つけられたことで、「もうちょっとだけ、生きてみよう」と、思えるようになったのです。
苦痛な人生でも、私が生きようと思った理由2.V系バンドにハマり承認欲求が満たされた
今までの私は、「気持ち悪い顎ブス」で、「なにもできなさそうな、トロい底辺女」、そして「臭い不愉快な女」です。
これらは実際に言われた言葉であり、その言葉が私をずっといましめてきました。
私は勉強を頑張っても、運動を頑張っても、見た目のイメージのせいで、すべてを台なしにされてきたのです。
私は小さいころから、絵を描くことが好きでした。
得意な絵で、美術コンテストで最優秀賞を何度も何度も獲得してきたほど、実力もあります。
自分専用の携帯を持ったのは高校生からですが、そのころから、mixiなどのSNSに絵を載せると、あっという間にフォロワーが増加。
コメントも多くもらっていたのです。
学校ではいじめられていた私の居場所は、SNSでした。
しかし、あるとき、クラスメイトに私のSNSアカウントを特定され、衝撃のできごとが起こります。
「こいつの顔こんなグロいんだけど、フォロワーの皆さんは知らないの?」
そんな言葉とともに、私を隠し撮りした写メを載せて拡散したのです。
ほかのクラスメイトも面白がって、私がどんなに嫌われているか、どんなにブスなのか……など。
SNSの私と、現実の私との違いをフォロワーたちにバラしました。
SNSのなかでは、友だちが多かった私。
しかも、お金持ちで、ハーフで色白で細身で、小顔で可愛くて、ちょっと天然で……。
そんなキャラ設定でいました。
顔はマスクをつけて顎を隠し、加工して、たまに載せていたのです。
こうした私の行いもいけなかったのでしょうね。
驚くほど早く、フォロワーたちは私を責めたてました。
いつも優しいコメントをくれていた人気絵師さんも、私に「大変だね」と慰めるコメントを送ってきます。
しかし、別のアカウントで、「あんなにブスだと思わなかった、キモい」とも、書き込んでいるのです。
私が絵を載せるたびに、「尊敬しています」と信者コメントをくれていた人たちも変わってしまい……。
「顎長すぎでしょ、嘘もついてるし。そりゃいじめられて当然」と書き込んでいました。
学校ではますますいじめがひどくなり、私はやっと得た居場所を追い出されます。
そればかりか、毎分毎秒送られてくる誹謗中傷のコメントや、裏切られた虚しさから、「生きることを辞めよう」と思ったのです。
でも、そんな私を救ったのは、V系バンドでした。
そのV系バンドは、ファンも300人しかついていないような、ドマイナーなバンド。
知ったきっかけは、SNSだったと思います。
クラスメイトにバレたのとは違うアカウントで、そのバンドのメンバーのイラストを投稿したところ……。
なんと、バンドのメンバー本人からRTをもらったのです。
そこからあれよあれよと、そのV系バンドのファンからも、コメントやフォロー申請が。
そのアカウントでは、ちょっと絵柄を変えていたからか、炎上したアカウントと、同一人物だとはバレませんでした。
バンドメンバーの絵を描くたびに、称賛される私。
メンバーもRTをしてくれて、私はすっかり承認欲求が満たされる快感に酔ったのです。
そのうちバンドのライブへも行くようになり、ファンレターを書いて過ごしているうちに、こう思います。
「死んだら、チヤホヤしてもらえない」と。
この「チヤホヤしてもらえない」という惜しい気持ちが、私を変えることに。
「顔さえバレなければ、皆が私を尊敬してくれるんだから、今死んだらもったいない」と、思わせるようになったのです。
とても単純かもしれませんが、誰よりも強い承認欲求が、死にたい気持ちに勝った瞬間でした。
当時のバンドは解散しましたが、今でもさまざまなドマイナーバンドのファンになり、そして絵を描いては、チヤホヤされています。
これこそが私の居場所なので、今度は絶対に、顔がバレないようにしないといけません。
苦痛な人生でも、私が生きようと思った理由3.いじめられる側から、復讐する側になった
かつての私は、いじめられる側の人間でした。
しかし、私をいじめていた人々のSNSアカウントを知ったことがきっかけで、今度は私が狩りをする側になったのです。
その復讐心こそが、私を「死にたい」と思う気持ちから遠ざけ、ある強い意思を芽生えさせました。
「復讐を終えるまでは、絶対に死なない」と。
きっかけは、SNSで何気なく私をいじめていた人の名前を、検索したことからです。
学校名や住んでいる地域なんかも入れて検索すると、意外とユーザーを絞れました。
はじめは、「あの人たち、今なにしてるんだろう」という好奇心。
しばらくして、そのうち1人のいじめっ子を特定しました。
そのひとは中学生のころ、私がカンニングしたと、嘘をついていじめてきた人です。
そのクラスメイトは、最初はとても優しく接してくれていました。
ほかのクラスメイトにいじめられたときも、「大丈夫?」と声をかけてくれていたのです。
しかし、裏では「顎ブスに優しくするの、そろそろ飽きた」と、私を馬鹿にしていたのを知っています。
それでも、「せっかくできた友だちだから」と、なにも言わずにいた私。
ですが、期末試験があったある日のホームルームで、その子とほかのクラスメイトたちが、いきなりこう言い出したのです。
「先生、○○さんがカンニングしていました」と。
私はなにもしていませんから、ただ固まって動けずにいました。
すると、言い出したうちの1人が私の筆箱を開け、「これです。この紙見ていました」と、見知らぬ紙を取り出します。
担任がその紙を見たあとに、私をチラッと見て、「これ、書いたのか?」と渡してきました。
それは10cm四方の白い紙で、歴史や数式など、テスト範囲の答えが書かれていたのです。
「違います、私じゃありません」と言っても、担任は信じた様子もなく……。
ただ一言、「ご両親を呼ぶから」とだけ言いました。
私よりも、こんなことをでっちあげた人たちのほうが、先生のお気に入りなので、仕方ない反応なのかもしれませんね。
「娘がやってないって言ってるけど……。でも本当のところはどうなんだろう」
私は否定しましたが、両親はなんだか、私を信用していない様子。
担任やほかの教師も、「○○さんならやりかねない」と、コソコソ話していたのです。
その日から、ますますいじめがひどくなる一方に。
他学年の生徒からもカンニング女と噂され、死にたくてしょうがない気持ちでいっぱいでした。
その経験から、私は人を信用できなくなったのです。
「いつ死のう? 30歳までには死んでやろう」としか、考えていませんでしたね。
でも、たまたま見つけた元同級生のアカウント、そこに書かれていた「不倫」の文字から、復讐心が芽生えてきたのです。
元同級生は、どうやらすでに結婚し、そのうえ、不倫をしているようで……。
そこからいろんなフォロワーを辿って、旦那のアカウントを見つけ、匿名で不倫していることを教えてあげました。
ついでに、いじめられたことも教えてあげると、どうやらその後、離婚したようです。
私は現在、そうやって、いろんないじめっこのアカウントを見つける毎日を送っています。
そうやって、「その人の悪行をいじめっこが、一番知られたくないであろう人へ教えてあげる」という復讐をしているのです。
私がされたことと比べると、可愛いものです。
それに、あの人たちとは違って、でっちあげでも嘘でもありません。
すべて真実を話しているだけです。
他人からすると、「復讐なんてなにも生まない。空しいだけだ」と言うかもしれません。
でも私にしてみたら、こうして「私を苦しめた人を今度は私が苦しめている」ということが、私に「死にたい」という気持ちを忘れさせてくれるのです。
まとめ
「いじめられるほうが悪い」という人がいます。
ですが、いじめられる側も血の通った人間ですから、いじめで傷つけば、「死にたい」と感じるものです。
私はいろんな辛い思いをしましたが、今では、別の目標や生き方を見つけたことで、「生きよう」と思えるようになりました。
誰でも、ちょっとしたきっかけで、死ぬより生きることを選べるのです。