いじめっこと再会し、そいつが義妹になったエピソード5編

落ち込む女性

50歳女性。自営業。

学生時代にひどいいじめにあって、その過去を乗り越えようと新しい土地に住み直し、地道に生活しているも、弟が連れてきた彼女が、まさか自分をいじめていた女だった。

 

ときを経て、自分の気持ちに整理を付けて、やっと二人の祝福を願うことや自分も過去を許す気持ちが、芽生えはじめてきた。

 

 

いじめっ子が義妹になったエピソード1.やる側の感情に任せた暗黒のいじめ

高校

 

学生時代のいじめは、それだけで自分の価値をなくしてしまうくらい過酷なものでした。

とにかく私は空気でしかなく、唯一空気から人間になれる瞬間はテスト期間中だけ。

 

いじめっ子たちは、赤点を取りたくない一心で、私のところにあらわれます。

勉強は十分すぎるほどしていたので、教えるのも簡単(覚えが悪いのは、向こうの責任ということで)。

毎回テスト期間だけはなんとなく人権が与えられる、そんな暗黒時代が3年続いていました。

 

高校を卒業すると、私は寮つきの会社に入り、なるべく地元から離れることに成功。

そこでの暮らしは、それまでとはまったく違う、平和なものになっていました。

 

いじめっ子が義妹になったエピソード2.なにが起こるか、わからないのが人生

驚く女性

 

就職して5年が無事に経過し、私もそろそろ新しい環境の新しい友人に心を許しはじめたころ、大きな事件が起りました。

3つ年下の弟から「姉貴にあわせたい女の子がいるから、時間つくってよ」、突然の連絡が。

 

「珍しい」と思いながらも、忙しい時間の合間を見つけて、弟とその彼女に会いに地元に戻ると、目の前にいたのは、高校時代にしっかりと私をいじめてくれた女だったのです。

女子高の過酷ないじめの状況が頭のなかに呼び戻され、それまでの平和が一瞬にして崩れていきました。

 

弟の話ではおつき合いをはじめたばかりのころ、学生時代の話になり、私の話が出て、「会いたい」と言ってきたのだとか。

いじめた方としては、なんとも思ってないということなんでしょう。

私には黒い思い出と、会いたくない衝動があふれているのに……。

 

ここは一応、私もその子も大人なので、うまく取りつくろって話をし、その場は切り抜けることに成功した私。

弟に「なるべく会いたくないからよろしく」と、一言告げて帰宅することにしました。

 

家庭のなかでは、家族が彼女に歓迎ムードだったので、「それを壊すこともない」と、なにも話さずに退散したのです。

 

いじめっ子が義妹になったエピソード3.家族になるかもしれない危機感

心配になる女性

 

正直、弟が親に合わせるということは、万が一でも、家族になってしまうかもしれない可能性が0ではないということ。

あの人が私の義妹になるなど、そんなことは考えたくもない現実です。

なんとか阻止したいけれど、弟の人生まで棒に振るのは望んでいないので、困りどころと言っていいでしょう。

 

職場にいても、今までどおり100%の力で仕事に取り組めない、集中しきれないジレンマを抱えながら、今後の動向を探ってみたりもする私。

高校でいじめられた経験があったからこそ、どんな逆境にも耐えてこられたのは事実だけれど、彼女に感謝はしているわけもなく……。

 

親の前でしおらしくしていた彼女の姿と、学生時代の鬼のような形相とが一致しなくて、ちょっと気持ちが悪い印象でした。

「相手は私を見てどう思ったのだろう……」と、実はそれが一番気になっていましたね。

 

 

いじめっ子が義妹になったエピソード4.高校卒業から彼女が歩いてきた道

暴力をふるう男性

 

高校卒業したときまではわかっていたけれど、それ以降会う予定もなければ、会いたくもない人だったので、それからどんな道を歩いてきたのか、謎ではありました。

そもそも、どんな経緯で弟とそうなったのかも疑問です。

 

高校卒業して、結婚して子どもを産んだ彼女でしたが、元旦那から暴力を受けて離婚したら、子どももとられたそう。

働く意欲も生きる意欲さえなくなったところに、弟と出会って、なんとか持ちこたえたのだとか。

「結局悪いことをすると、自分に回ってくるのかもしれませんね」と思いながら、二人のことはすごく気になるけど、ノータッチでいくことに。

 

ただひとつ、弟には「あの子とちょっとあったから昔。私はあまり会いたくない」ということを伝えてみると、驚きの返事が返ってきたのです。

「あぁ知ってる、いじめられてたんだってね。姉貴が勉強ばっかでつまんないから、からかったらしいよ」と。

 

それを知ってのうえでなら、もう私が口をはさむ隙はひとつもありません。

あとは結果が決まれば納得するだけという状況にして、なるべくあちらをみないように、生活を続けることにしました。

 

それから半年経って、突然彼女から連絡が。

一度会って二人で話したいとのこと。

正直二人で会うのは怖かったのですが、断る理由が見つからなかったので、会うことに。

 

会う場所は、私の家の近くのカフェにして、いつでも帰れる状態をつくってお話開始。

「あの……」話しにくそうに彼女が口火を切ると、私はただ見つめるだけで次の言葉を待ちました。

 

「あのときは、本当にごめんなさい。そんなことで許してもらえると思っていないけれど、こうして知らない間に会えたのは、なにかの縁だから、高校時代のことだけは謝っておこうと思って」

 

うつむき加減で、弱々しい声で話す彼女の姿には、昔の面影はまったくありません。

反省しているのかそのフリなのかはわからないけれど、こちらも「許すしかない」と思えてしまうほどの変わりようでした。

 

高校卒業以来はじめて会ったときは、まだ彼女の昔の姿におびえていたが、今は「もしかしたら、違うつき合いができるようになるのかもしれない」という、わずかな希望を持ってみることにしたのです。

 

いじめっ子が義妹になったエピソード5.それから2年で義妹に

あきれる

 

彼女が再びあらわれたことでなんとなく、実家との距離もつかず離れずになってしまっていた私でした。

しかし、ついに予想していた最悪の展開がやってきてしまったのです。

 

再会してから2年が経った今、ついに結婚を決めたと弟から聞きました。

本当は、「許せない……。許しているふりを大人だからしてるだけ!」そんな気持ちがやっぱりぬぐいきれず、実家との距離もさらに遠めになってしまったのです。

 

まとめ

今は、ある程度の距離を持って弟夫婦とつき合っていますが、「いつまでも私の気分だけで、空気を悪くしているのはいけない」と思うので、「許す」ことが必要になってきています。

本来なら、二度と会うことのない人との驚くべき再会。

しかし、私たちの関係を修復するために起こった縁だったと割り切って、これからは徐々に関係を修復することができるように、私も努力していきたいと今は思っています。

 

思い出してまた道は逆戻りするかもしれないけれど、今はこう信じているのです。

「きっと、心からあの子を許すことが、できるようになれるはずだ」と。