顔のコンプレックスを克服したエピソード4編

前に進む女性

29歳女性。フリーライター。

22歳のころに事故で、脳挫傷、手首・骨盤骨折などのケガを負う。

さらに事故の衝撃で、顔の左半分の歪んでしまい、約半年のリハビリを行いました。

 

顔の歪みは現在も少し残ってしまっているが、お付き合いしている彼氏との生活を満喫中。

 

 

顔のコンプレックスを克服したエピソード1.事故の衝撃で、顔の半分が歪む

救急車

 

22歳の春の話です。

私は事故を起こしてしまいました。

 

事故を起こした私は、救急車ですぐさま大学病院の救命センターに運ばれ、手術を受けることに。

その結果、なんとか一命を取りとめました。

 

脳挫傷の大怪我をしていたようです。

ちなみに私は、救急車で運ばれ手術を受けた記憶がまったくありません。

 

その後、約1週間救命病棟のICUに入院。

目が覚めると、頭は動かないように固定され、手足も固定されていました。

とにかく、体を動かしてはいけない状態だったのです。

 

一瞬「私なんでここにいるのかな……?」と混乱した私。

ベッドの上でなにもできずに、ボーッと目線だけを窓に移して、満開の桜を見ていました。

 

桜を見ていた私は、ある違和感を感じたのです。

「あれ、左目からずっと涙が出ている……」

 

このときはまだ、自分の状況を把握していなかった私。

事故によって顔を強打した影響で、顔の左半分が大きく歪んでしまっていたのです。

 

顔のコンプレックスを克服したエピソード2.鏡をみて泣く

泣いている女性

 

救命病棟のICUで、一週間ほど過ごしたあと、一般病棟に移りました。

医者から、これからの治療についての話を聞き、母親と一緒に病室へ。

 

医者は淡々と「顔のリハビリもします」と、治療計画のときに言っていました。

ですが、実際に私は、自分の顔がどんな状況になっているか、そのときはまだ知らなかったのです。

 

車椅子に乗せられたまま病室に移り、病室で私は母親に、「鏡がみたい」と言いました。

すると、母親は一瞬顔を強張らせ、「鏡? 今お母さん持ってない。ごめんね」と言います。

どうしても、自分の顔を確認したかった私は、自分で車椅子を動かしてトイレに行き、鏡を見ました。

 

そこで、母親が顔を強張らせた理由がはっきり分かったのです。

見事なまでに、顔の左半分が歪んでいました。

まばたきをしても、左の瞼がしっかり閉じないから、ずっと涙が出ていたのです。

 

事故にあう前の私とは、別人が写っているようでしたが、鏡に写っていたのは間違いなく私。

想像以上にひどく歪んだ自分の顔を見て、私は声をあげて、トイレで泣きました。

 

22歳で、人生これからのときに、顔が歪んでしまったのです。

「こんな顔じゃ、これから恋愛をすることも、ましてや結婚なんてできるわけがない。この顔でこれからどうやって生きていけばいいの」

絶望が押し寄せ、涙がしばらく止まりませんでした。

 

 

顔のコンプレックスを克服したエピソード3.リハビリがはじまる

入院

 

事故の衝撃で歪んでしまった、私の顔のリハビリがスタート。

「顔のリハビリ……?」と思っていたのですが、毎日リハビリの専門医の先生が、私の病室まできてくれました。

そして、顔のマッサージや、ゴム手袋をつけた手で、口のなかをぐいぐいと押して、リハビリをしてくれます。

 

「口のなかに手を入れられて恥ずかしいし、こんなので顔の歪みが治るの?」と思っていた私。

病室で過ごしているときも、リハビリの先生に教えてもらったマッサージをずっとしていました。

 

「根気よくリハビリを続けていけば、顔の歪みは大体取れるはずだから!」

先生はいつも、私を励ましてくれたのです。

ですが、左目からはずっと涙が流れていましたし、喋るのも食事を取るのも、うまくできない自分。

 

鏡を見れば、別人のような自分を見るたびに、私は「もう一生、このままの顔でいい」と、投げやりに。

「もうリハビリなんてしたくない! 今日は誰とも会いたくない!」と、先生に反抗していました。

 

それでも、先生は毎日私の病室にきて、30分ほどのリハビリを続けてくれたのです。

 

顔のコンプレックスを克服したエピソード4.ここまでもとに戻るなんて! でもまだ……

病院

 

リハビリをはじめて、2ヶ月目くらいから左目から流れる涙はとまりました。

食事のときも、左右バランスよく物を噛めるようにまで回復。

 

しかし、それでも顔は、まだまだ歪んでいます。

先生と毎日毎日根気よく、リハビリを続けました。

 

「顔の筋肉が固まらないように、笑わなきゃダメだよ」と、先生は言います。

なかなか笑えなかった私も、そのころには少しずつ会話のなかで、笑えるようになっていました。

 

約半年間の入院生活が経過したころ。

退院するころには、私のひどく歪んでいた顔の左側は、事故前の私と、ほぼ同じまでにもとに戻っていたのです。

 

退院するとき、私と母親はリハビリの先生に、「本当にありがとうございました」と頭を下げました。

仕事とは言え、とても扱いにくい患者だったであろう私を、諦めることなくリハビリを行ってくれた先生には、感謝しかありませんでしたね。

 

現在は、普段の生活のなかで、まったく顔の歪みは気になりません。

しかし、写真を撮ったときなどに、「あ~やっぱり、左が歪んでるなぁ……」と自分では気になります。

 

しかし、お付き合いしている彼は、私の写真を見ても、こう言ってくれるのです。

「顔の歪みなんて、全然わからないし、気にしないでいいよ」と。

 

彼が気を使って、言ってくれているのか分かりません。

しかしそれでも、写真に写った自分の顔の歪みについては、「そうだよね~気にしすぎだよね!」と、あえて何事もないように振舞っています。

 

まとめ

写真では唇の左端、左眉の高さなどがアンバランスなのがわかる程度なのですが、まだ写真で見る自分の顔を上手く直視できません。

本当は、写真も極力避けたいです。

 

「いつか、そんな自分の顔も受け入れて、大好きな彼といっぱい写真を撮れるようになりたいな」と思っています。