32歳、女性、主婦。
祖母や母が、無類の占い好き。
子どものころから、家族と一緒に、占いに行っていた。
今まで行ったことがある占い師の数は、数十人以上。
自身の名前も、占い師が名付けた。
今では逆に、あまり占いに興味がなくなってしまった。
見出し
怖いほどに占いが当たったエピソード1.誰にも彼氏のことを相談できず、悩んでいた
私は当時、彼氏とのことで悩んでいました。
彼氏はいい人ですが、定職に付かず、フラフラしていた彼。
しかも、気分屋で、とくにキッカケもなく、前日まで仲よくしていたのに、急に「別れる」と言い出す、困った人でした。
私は彼が「別れる」と言うたびに、落ち込んでしまい、よく泣いていましたね。
女友だちに相談しても、何度も別れを繰り返しているので、呆れられてしまい……。
「そんな男とは、キレイさっぱり別れろ」としか、言われないようになりました。
いつも優しく、話を聞いてくれていた友人でさえそう。
「進歩がないし、同じことばかり言ってるよ」と言い、彼の相談にはのってくれなくなっていました。
たしかに、逆の立場で考えれば、同じ男性との、同じような内容のグダグダした恋愛話を聞くなんて、嫌になるのもわかります。
なので、私は誰にも、彼とのことが相談できず、モヤモヤしていたのです。
怖いほどに占いが当たったエピソード2.占い好きの祖母からの誘い
そんなとき、遠方に住んでいる祖母が、「近くのお寺に、一緒に行かないか」と、連絡をしてきました。
祖母の近所にある、お寺の住職には、霊感があるそうで……。
1回3000円を払えば、どんな悩みでも聞いてくれるとのことでした。
祖母は、私が将来のことで、なんとなく不安になっていたことを知っていたようです。
それに、近所で「当たる」と、ウワサになっているので、1度お寺に行ってみたいけれど、一人で行くのは嫌だった祖母。
そのため、私と一緒に行きたかったのでしょう。
当日、祖母と駅で待ち合わせをして、お寺へ向かいました。
駅から、20分以上歩かないといけない場所にあったので、タクシーを利用。
タクシーのなかで、「○○寺へ行きたい」と言いました。
すると、運転手さんがこう言ったのです。
「なんか当たるって有名で、そこへ連れて行ってほしいってお客さんが多いんですよ」と。
怖いほどに占いが当たったエピソード3.お寺に到着
お寺に着くと、想像以上に普通のお寺でした。
人気と聞いていたので、立派なお寺を想像していましたが、実際は大きくありません。
どちらかといえば小さくて、静かで地味な感じです。
しかし、お堂のなかに入って驚いたのが、その小さな玄関に、入り切らない量の靴が脱いであったこと。
私のあとからきた人たちは、玄関入りきれなくなった靴を、外にビニールシートを広げて、並べていました。
靴を脱いだあと、玄関でお金を支払い。
その後、住所と名前と生年月日、年齢を紙に書くように言われました。
どうやら、1人何分など、見てもらえる時間が、決まっているわけではないそうで……。
また、住職の判断で「もういい」と思った内容には、答えてもらえないこともあるとのこと。
お堂のなかに入ると、板の間に、ずらっと人が座っていました。
ほぼ女性が占めていて、五十代から六十代ぐらいの方が、もっとも多かったように思います。
私と祖母も、その板の間に座って、住職があらわれるのを待ちました。
怖いほどに占いが当たったエピソード4.占い師が登場
しばらくすると、住職がやってきました。
頭がツルツルで、にこにこした顔の、普通のおじいちゃん。
お経をある程度読み終えたあと、みんなが座っているほうに振り向いて、「どうぞ」と言いました。
すると、一番端に座っていた人が、住職の真ん前に座ります。
そして、「夫の会社が~」など、悩みを話し出したのです。
私は、「占いは、個室のようなところで話すもの」だと思っていたので、驚きました。
これではまるで、公開相談状態です。
実際、旦那の浮気などを相談する内容になると、ほかの女性も一緒にきた人と話題にしていました。
「あらっ。そんなのってヒドいわね」「○○さんの奥さんにも、似たようなことがあったみたいよ」などと。
当時、まだ若かった私には、周りにいる見ず知らずの人に、悩みを聞かれるなんて、恥ずかしくて、仕方ありませんでしたね。
怖いほどに占いが当たったエピソード5.自分が占ってもらう番になる
何時間か経ったとき、私たちの順番になりました。
祖母に促され、住職の正面に、私と祖母が座ります。
住職が「どうしたの? なにを聞いてもらいたい?」と、優しく私に尋ねました。
本当は彼氏のことを話したかったのですが、祖母にも話していない内容です。
それに、周りの人にも聞かれるのが嫌なので、「なんとなく将来が不安で」と、漠然とした相談を言いました。
しばらく住職は無言になったあと、お経のような物を唱えて、こう言いだしたのです。
「あなた、夜に電話をするような男性、ちゃんといるね。その男性のこと、好きだね」
「だけど、ほかの男性と来年職場で出会う、あなたとしては、まったくタイプじゃないし、好きじゃない男性。その人からすごく好かれるよ」と。
それを聞いて、「まあ。じゃあ、その方と結婚するのかしら? ひ孫が見れるわね」と喜ぶ祖母。
しかし、住職は「うーん、このお嬢さんは、顔が好みじゃないと、結婚というか付き合わないよね。残念だけど」と言いました。
私は、「つまり、不細工な男性から好かれるってこと?」と、微妙な気分に。
そして、住職はまたお経を唱えると、続けてこう言いだしました。
「だめだ。このお嬢さん。安定とかで、男性を選ばないよ」
「女性はね、好かれて、愛されて、結婚したほうが幸せだけどね」
「苦労するね。でもお嬢さんは、好きなほうと一緒になりたいもんね。あなたは幸せなんだから、文句言っちゃだめだよ」と。
「今付き合っている彼氏と苦労するけれど、結局別れられないんだ」
私はそう思いました。
住職のその言葉を聞いた祖母は、住職にこう言います。
「私も女性は好きになってもらえて、望まれて結婚したほうがいいと思うのに。住職、どうしようもないのですか? 孫が不幸になるのは困ります」と。
それを聞いて、住職はこう返答しました。
「不幸かどうかは、このお嬢さんが決めることでしょ」
「わがままを聞いてくれる男性よりも、わがままを言ってくれる男性のことが、好きなんだから、仕方ないでしょう」と。
そう返答されても、まだ住職に、なにか言いたそうにしていた祖母。
しかし、住職が「はい。ありがとうございました。次の方どうぞ」と言ってしまったので、そこで終了したのです。
私はそのとき、親に見つからないように、夜遅い時間になると、車庫で彼と電話をしていました。
「住職は、そのことが見えているんじゃないか」と思って、とにかく驚きましたね。
お寺を出て、祖母が「おばあちゃんはなんだか納得できないけれど、あなたが幸せなら、仕方ないね」と言いました。
私はとりあえず、祖母を励ますことに。
「しょせんは占いだよ。私がどんなお金持ちと結婚するか、一生独身かなんて、誰にもわからないことだから、大丈夫」と。
「来年、もしも住職が言っていた、好きになってくれる男性があらわれたら、おばあちゃんに報告してよ」
「応援したいから」
私の言葉を聞いて、祖母はこう言うのでした。
怖いほどに占いが当たったエピソード6.占い通りの人に出会う
翌年になっても、私は相変わらず、彼とグダグダと交際を続けていました。
当時女性が9割いるような、女だらけの職場に勤めていた私。
「そういえば、去年お坊さんが言ってた、職場で出会う私のことを好きになる男性って、本当なわけないな。そもそも男がいないし」
そう思っていたのです。
しかし、あるとき、職場が人手不足のために、ほかの支社から私がいた支社へ、頻繁に応援にきてもらうことになりました。
支社間の移動は、基本的に長距離で、体力的にも大変。
そのため、数少ない男性社員が、応援にやってくることになったのです。
そこで応援にやってきたのが、高橋さん(仮名)という男性でした。
高橋さんは、正直仕事はあまりできず、顔もかっこよくありません。
身長も私よりも低く、160センチなさそうでした。
しかも、笑い方がとても気持ちが悪く、漫画のように「うひゃひゃひゃひゃ」と笑うのです。
店舗で留守番になると、この高橋さんと二人っきりになることが多くて、とても嫌でした。
ある日、この高橋さんから「休みの日に、一緒に出かけよう」と誘われた私。
私は恋愛対象どころか、気持ち悪いと思っていたので、「むりです」と言いました。
そして「出かける、かわいいバッグもないし」と、よくわからないことをとっさに言ってしまったのです。
すると、しばらく経ってから、高橋さんに「ピンク? 白? なに色が好きなの?」と尋ねられました。
なんのことかわからず、「え、じゃあ、ピンク」と返答。
すると、次の日、ショッキングピンクのバッグを高橋さんからプレゼントされました。
「これでお出かけできるでしょ。うひゃひゃひゃ」と言い、笑っている高橋さん。
私は気持ち悪く感じたので、バッグを受け取らずに、とことん高橋さんのことを拒否。
高橋さんは私に怒られようが、無視をされようが、関係ありません。
私の機嫌を取ろうと、お菓子を買ってきたり、仕事を手伝ってくれたりして、必死でした。
怖いほどに占いが当たったエピソード7.占いが当たっていたと確信
そんな高橋さんの様子を見ていた、職場の人に、私はこう言われました。
「高橋さんはたしかにキモいけど、あなたのことをそこまで好きになってくれる人は、もうあらわれないんじゃない?」と。
そのとき、占いをしてくれたお坊さんのことを思い出した私。
「職場で出会って、私のことを好きになってくれて、わがままを聞いてくれるけれど、見た目がムリな男性」
その男性が、高橋さんそのものだと気づいたのです。
あまりにも占いが当たっていて、ゾワッとしてしまいました。
美人でモテるタイプの女性なら、何人か言いよってくる男性のなかの1人に、高橋さんのようなタイプがいることもあると思います。
しかし、お世辞でも美人とは言えない私に、言いよってくる男性は、あとにも先にも、高橋さんだけでした。
しかも、お坊さんが言った「来年」という時期も合っています。
ちょうどそのころ、祖母から「お坊さんが言っていた男性には出会った?」と、尋ねられました。
ですが、私は「わからない」と言っておくことに。
「出会った」なんて言ったら、きっと祖母は「その人と付き合いなさい」と言いそうだったからです。
たしかに、高橋さんと付き合えば、すぐに結婚ができると思います。
それに、高橋さんはモテそうにないタイプだから、浮気の心配はないかもしれません。
そのうえ、私がどんな罵詈雑言を浴びせても、ニヤニヤ笑っているような人。
なので、私が振り回すことがあっても、私が振り回されるようなことはありません。
だけど、お坊さんの言った通り、私は高橋さんよりも、定職に付かず、フラフラしている彼のほうを選びました。
どんな男性に出会うか、そして私がどんな選択をするかまで、お坊さんには、見えていたのだと思いますね。
まとめ
占いは、たしかに当たる場合もあると思います。
しかし、どうするのか選ぶのは、結局自分自身です。
将来的に、「なにに気をつければいいか」を知る程度だと考えて、占いに振り回されないようにすることが、重要だと思います。