広島県在住、22歳男性。
小学校のとき、ある障害者に出会って、障害が個性に変わる瞬間をはじめて体験しました。
それから、たびたび魅せられる障害者の、逆境を逆手に取った素敵な個性を発見する瞬間を何度も体験。
今では、そのことが励みになっており、いろいろな新しいことに挑戦中。
見出し
障害は個性だと実感したエピソード1.一瞬で世界を変えてしまう才能
これは、私が小学校のときのエピソードです。
障害がある人に対する偏見は、少なからずあるかもしれません。
「障害を持っていて可哀想」「不便だろうな」など、どれもネガティブに偏った見方です。
しかし、私が小学校のとき、障害を持った人が奇跡を起こします。
その人のことを仮にSくんと呼びましょう。
Sくんは、生まれながらにしてうまく舌が回らず、言葉をうまく発音することができません。
普段会話するときも、ほとんどなにを言っているかが聞き取れず、コミュニケーションの主なやり取りは、手話か筆談でした。
昼休みの時間が終わり、5時間目の授業がはじまろうとしていたときのこと。
みんな給食を食べて、昼休憩の時間に遊び終わったばかりなので、全然集中できません。
これは、私にとっては、いつもの状況でした。
しかし、その日は先生の機嫌がやたらと悪く、生徒一人一人に注意をする先生。
そのうえ、かなりきつめの言葉が、教室を飛び交っていたのです。
挙げ句の果てには、授業がはじまって、すぐに授業が終了。
僕たちの授業態度の悪さに対する、説教がはじまっていたのです。
「なんなんだ、今日のお前たちの授業態度は!!」
「下手をすれば、廊下まで聞こえるのではないか」、というぐらいの声で怒鳴る先生。
みんなうつむいていて、険悪なムードが教室を覆っていました。
個人名を呼ばれた人は、今にも泣き出してしまいそうだったのです。
そんな険悪のムードのなかに、「コッピュピョ」という音が教室に鳴り響きました。
すると、さっきまで誰も喋らなかった険悪なムードの教室に、爆笑が訪れたのです。
それは、Sくんのくしゃみでした。
一瞬なにが起こっているのか、理解できなかった私。
しかし、教室の笑い声はしばらく止むことはなく、さっきまであんなに怒っていた先生ですら、笑っていました。
私は、このとき、こう思ったのです。
「Sくんの生まれつき舌が回らない障害が、このミラクルくしゃみを起こしたのではないか」と。
普通の人でも、面白いくしゃみをする人はいるかもしれません。
ですが、Sくんは障害を持っていたために、その確率があがったと思います。
障害を逆手に取り、クラスの雰囲気を一瞬にして変えてしまったのです。
障害は個性だと実感したエピソード2.気持ちが伝わってくる、魂のこもった絵画
これも、私が小学校のときに体験したできごとです。
私のクラスには、手足に障害を持つ友だちがいました。
この人を仮にZさんと呼ぶことにしましょう。
このZさんは普段自由に動くこともできないので、体育の授業はもちろん、トイレに行くことも一人ではできません。
そんな、Zさんの障害を「個性だな」と感じたエピソードがあります。
それは、図画工作の時間でのこと。
図画工作といってもたくさんありますが、Zさんの個性が最大に発揮されるのは、絵画でした。
私の学校では、年に一度、絵画の校内コンクールがあります。
テーマはその年によって異なり、今年のテーマは「校内にある自然の風景を絵にする」というものでした。
仲のいい友だちと、それなりの景色を見つけて、それなりの絵を描いていた私。
なので、コンクールのことは正直言って、「どうでもいい」と思っていました。
そして、いよいよコンクールの授賞式の日が訪れます。
「どうせ、絵心のある才能のある筆遣いの上手い人が、受賞するのだろう」と、心のなかで私は思っていました。
そんなことを思いながら、第3位、第2位と発表され、いよいよ1位の発表です。
そして、呼ばれたのは、なんとZさんでした。
私は度肝を抜かれてしまいましたね。
実際にそのZさんの作品を見てみると、学校の一番大きな杉の木が描かれており、それはまさに幻想的な風景でした。
どうやって描いたのかを尋ねると、Zさんはこう答えます。
「絵の具を画用紙に垂らして、息を吹きかけ、絵の具を伸ばし、杉の立派な幹や枝を表現した」と。
「筆を使わず、ここまで表現できるのか」と、私は深い感銘を抱きました。
それに、適当に絵を描いてしまった自分を深く恥じましたね。
「きっと、Zさんは一生懸命描いたのだろう」というのが、その絵を通して伝わってきました。
障害は個性だと実感したエピソード3.華麗な車椅子裁き
これは、私が中学校に在学していたときのエピソードです。
私の同級生に、足の不自由の友だちがいました。
その人のことを仮にXくんとしましょう。
Xくんは生まれながらにして、足が不自由で、普段はいつも車椅子で生活しています。
体育の授業も、授業内容によっては、見学するだけというのも珍しくありません。
そんなXくんは、あることがきっかけで、とても人気者になるのです。
私が中学2年のときの6月に、クラスマッチが行われることになりました。
今回のスポーツのテーマは、「バスケットボール」。
私のクラスには、バスケ部がたくさんいたので、勝利を確信していました。
ですが、それと同時に「バスケ部でない僕が活躍できる場面は、ほとんどないであろう」ということも、また確信していたのです。
人数が多いので、クラスのなかで4チームに、グループ分けされることに。
そこで私は、偶然Xくんと一緒のチームになりましたが、まずXくんも入っていることに、私は少し意外性を感じたのです。
そして、クラスマッチ当日。私たちの出番が回ってきます。
私のチームには、バスケ部の人がたくさんいたので、「僕の出番はあまりないであろう」と思っていました。
そして、試合開始のブザーが鳴ります。
案の定、私の出番はほとんど皆無でした。
しかし、私はそこで、とんでもない光景を目にします。
あの車椅子に乗っているXくんが、バスケ部の人と華麗なパス交換をしていたのです。
いや、それだけではありません。
華麗な車椅子裁きによって、相手をかわしてドリブルし、そしてシュートまで決めていたのです。
これには、私だけではなく、クラスのみんなも驚いていました。
結果、私たちのクラスは、Xくんの大活躍によって優勝。
「車椅子に乗って、ここまでできるのか」と、私は感動しました。
あとで話を聞いてみると、Xくんは小学生のときから、車椅子バスケをしていたそうです。
「継続は力なり」とは、まさにこのことですね。
足が不自由という逆境を乗り越えて、Xくんは最高のポジティブな個性を僕に見せてくれました。
まとめ
どれも、感動をもらえるものや、勇気をもらえるものばかりでした。
彼らは逆境を乗り越え、自分の障害を逆手に取り、自分たちの素敵な個性にすることに成功していたのです。
諦めの早い自分には、こんなすごいことはできないかもしれません。
ですが、「なにかに挑戦してみよう」と思ったときは、彼らのことを思い出して、勇気をもらっています。