32歳、女性、主婦。
田舎で事務職で採用されるが、人手不足が原因で、受付業務も兼務する。
「女性社員はお茶をいれる」、「電話応対をする」、「取引先の案内業務をする」といった、性別で仕事内容を区別する、昔ながらの会社で勤めていた。
「顔がね」と言われたエピソード1.お茶出しの仕事をさせてもらえない
私が勤めていた会社では、外回りの仕事もあったので、事務所には常に、1~2人の女子社員がいるように、シフトが組まれていました。
入社したときは、電話対応の方法やお茶出しのマナーについて、研修を受けた私。
社員それぞれにマイカップがあって、コーヒーやお茶など、飲み物も違うことを教えてもらいました。
「女性の新入社員は、お茶出しを頑張ってね」
そう言われていたため、「私も事務所にいるときは、お茶出しを頑張ろう」と思いました。
しかし、私がお茶を入れようとすると、必ずほかの女性社員がお茶を入れます。
私が「代わります」といくら言っても、「いいから。いいから」と言われてしまい、代わってもらえません。
なかには、私がお茶を入れようとすると、「自分でいれるからいい」と断わるのに、ほかの女性社員が入れたお茶なら飲む人もいました。
そんなある日、私がいないと思っていた男性社員が、こう言っていたのです。
「お茶はキレイな人にいれてもらいたいから。あの顔がね」と。
その言葉を聞くまでは、「真面目にお茶を入れなくちゃ」と思っていたので、とってもショックでした。
まさか、「お茶を入れられたくない」と思われていたなんて、考えもしませんでしたね。
それを聞いてから、積極的にお茶をいれようとしなくなりましたが、誰からも文句は言われませんでした。
「顔がね」と言われたエピソード2.受付の仕事をしていると信じてもらえない
私は、子どものころの不注意でついた腕の傷痕が、ずっと気になっていました。
普段は、夏でも長袖を着て、傷痕があまり目立たないように工夫するほど。
私が当時働いていた会社では、人手不足のために、女性社員全員がローテーションで、受付業務をすることになっていました。
受付業務では、普段は上から着ている長袖のカーディガンが禁止されています。
そのため、半袖の制服のみで、仕事をしなくてはいけません。
「半袖だと、腕の傷が目立つので、なんとかできないか」と悩んでいた私。
そんなある日、美容部員の仕事をしている友人から、ある化粧品について教えてもらいました。
百貨店だけで取り扱っている化粧品で、「カバー力が強くて、傷や火傷痕でも消せる」と教えてくれたのです。
私はその商品がどうしても欲しくなったので、地方からわざわざ、その化粧品を購入しに行きました。
美容部員の方に、「その化粧品を購入したい」と伝えると、「特殊なファンデーションなので、使い方を教えることになっている」と言います。
そこで、雑談として、どうしてその化粧品が欲しいのか、尋ねられたのです。
私は「仕事中に、制服から腕が出て傷痕が見えるのが嫌なんです。見た目には気をつけるように言われているので」と言いました。
すると、美容部員の方はこう言ったのです。
「衛生管理がしっかりしている職場なんですね、でも、髪の毛を帽子に入れるとかなら分かりますが、傷痕まで指摘されるのは、困りますね」と。
受付業務時に、イベントコンパニオンのような帽子を被ることになっていた私の会社。
なので、「そうなんです。帽子を被るのも大変なんです」と答えました。
すると、美容部員さんはこう言ってきたのです。
「やっぱり、工場勤務なんですね。手先を使う仕事は、腕も目につきやすいですものね」と。
「あれ? なにか誤解しているな」と感じました。
私が「いえ、工場ではなく、会社の受付業務で、帽子を被るのです」と言います。
しかし、「髪の毛の出ない、白い帽子ですよね?」と誤解が解けません。
仕方なく、スマホに保存してあった、受付業務をしているときの写真を見せたのです。
すると、美容部員さんは「え? うそっ」と、とても驚いた様子。
なぜそんなに驚かれるのか不思議だったし、嫌な感じがしました。
ですが、そのままファンデーションを購入して、そのブースを離れることにしたのです。
そのあと、同じ百貨店内の別の化粧品ブランドで、欲しい物があったので購入しました。
その際、「イベント期間中なので、無料でフェイシャルマッサージが受けることができますよ」と、案内されたのです。
「奥にあるブースで、お待ちください」と言われ、ひとりで待っていた私。
すると、先ほどファンデーションを購入した会社の、美容部員さんたちの話し声が聞こえてきました。
「さっきのお客様、私、工場勤務だと思ってお話してたら、受付業務だって。びっくしちゃった」
「『受付』って顔とかで採用するよね。田舎の会社は仕方ないのかしら」
どうやら、イベント用にパーテーションで、簡易的に仕切られたスペースだったようで……。
先ほど接客をした人間が、近くにいるとは思わなかったようです。
すぐに私をマッサージしてくれる美容部員の方がきて、マッサージの準備をはじめます。
すると、物音から「お客様がきた」と気付いた彼女たちは、雑談を止めました。
私はマッサージを受けている間中、先ほど聞こえてしまった言葉を思い出してしまい、辛くて仕方なかったです。
もともと、受付業務なんてしたくはなかったし、もっと美人な人がする仕事ということも知っています。
しかも、自分よりも何倍もキレイな美容部員の方に、そんなふうに言われるなんて、「女性として終わっている」と思いました。
それからずっと、自分が受付に座らないと行けないときは、こう思うようになってしまったのです。
「お客様に、『受付に似合わない女性』と思われているんだろうな」と。
まとめ
ある程度、人を見た目で判断してしまうのはわかります。
ですが、自分の努力ではどうしようもできない顔のことで、先入観を持つのはよくないと思うのです。
内心、顔がよくないと思っても、職場で話題にするのは、大人げないことではないでしょうか。