53歳女性。
バツイチで、2人の息子がいる。
実家からの仕送りと語学関係の仕事で、生計を立てています。
しかし、実家との折り合いが悪く、そのことが原因で、長男が大学を中退してニートに。
今は長男もニートを抜け出し、紅茶を楽しむことと、猫との時間が唯一の楽しみ。
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ニートの息子が働くようになったエピソード1.長男がニートになるまで
きっかけは、大学を中退した6年前のことでした。
対人恐怖症が原因で、通学できない状態に。
あとで長男から聞いた話によると、そのころは通学電車のなかでも、周囲の視線が気になって辛かったそうです。
大学の講義も周囲の視線が気になり集中できず、徐々に大学へ行く日が減っていきました。
そして、大学2年が終わった3月に、正式に退学届けを提出。
そのとき、長男は私に大学を辞める理由についてこう言いました。
「3流大学を卒業しても、いい仕事には就けないから行く意味がない、大学を辞めて働く」と。
対人恐怖症については言いたくなかったようで、私もそのことに気づかなかったのです。
ニートの息子が働くようになったエピソード2.アルバイトが続かない
大学を辞めてなにもせず家にいる長男に、「アルバイトでもしてみたら」と勧めましたが、だらだらと家にいる日が続きました。
大学中退から8カ月経った12月に、ようやく観光地の警備の仕事に就職。
しかし、一ヶ月だけのアルバイトで、期間が終われば、また家にこもってしまったのです。
その後、コンビニでアルバイトをはじめましたが、店長から嫌なことを言われたことを理由に、約3カ月で退職しました。
それからアルバイトを探そうともしない長男。
私にはそんな長男が、少し嫌なことを言われたぐらいで仕事を辞める、甘えた人間にしか見えなかったです。
ニートの息子が働くようになったエピソード3.昼夜逆転の生活が続く
長男は自分の部屋に引きこもってしまい、1日中テレビを見たり、スマホをいじったりしていました。
一体いつ起きて、いつ寝ているのかまったく把握できません。
食事も、自分の部屋に持ち込むようになっていきました。
「このままでは、部屋から一歩も外に出なくなってしまう」と思った私は、長男にこう言います。
「学校へ行かない、仕事もしない人には食事をつくらないし、洗濯もしないから」
そう言い、毎月20,000円を渡して、自分で食事をつくらせることにしたのです。
そのことについて長男は、反発しませんでした。
しかし、栄養バランスが悪かったり、洗濯物をためこんだりで、見ているのが辛かったですね。
自分の部屋も掃除をしないので、半年も経たないうちに、ゴミ部屋になってしまいました。
ニートの息子が働くようになったエピソード4.職業訓練を受ける
大学中退から2年後の4月、私が勧めたこともあり、ハローワークを通して9か月間の職業訓練を受けました。
職業訓練中は、昼夜逆転生活が正常に。
しかし、職業訓練が終わると、またもとのニートに戻ってしまったのです。
自分から就職の面接を受けたり、アルバイトへ行ったりしない長男。
私は長男が対人恐怖症だとは気づかず、怠け者にしか見えませんでした。
ニートの息子が働くようになったエピソード5.就職活動が上手くいかない
長男は「このままではいけない」と気づいていましたが、なかなか行動に移せず、苦しんでいました。
ハローワークへも行けない状態で、あとから聞くと、このころはスーパーへ買い物に行くのも辛かったようです。
「働ける年齢なのに、昼間にスーパーをウロウロして、周囲からどう思われるだろう」と、人目が気になったとのこと。
職業訓練が終わって半年が過ぎ、やっとハローワークへ行った長男。
その後、3か月間契約で、役所の事務作業の仕事に就きました。
契約期間を終えて少し自信がついたのか、長男は就職活動を積極的に行うように。
でも、「大学中退」というハンデは大きかったようで……。
書類面接で落とされたり、面接まで進んでも「覇気がない」とか言われたりして、不採用が続きました。
それから半年後、約50社の不採用が続いたあと、ようやくトライアル求人で採用。
3ヶ月間、無遅刻無欠勤で働きましたが、「適性がない」という理由で、結局は正社員にはなれませんでした。
このことで落ち込んだ長男は、またニートに戻ってしまったのです。
ニートの息子が働くようになったエピソード6.派遣社員として働きはじめる
就職活動を頑張っても正社員になれずに、落ち込んでいた長男。
私は、そんな長男になんの助言をすればいいか、随分悩みました。
そんなある日、私はタウン誌で、理系の人材派遣会社の記事を発見。
職歴がない長男が、派遣社員として登録できるのか不安でしたが、その人材派遣会社では、派遣先を決める前に社内研修があったのです。
「未経験でも、可能性があるかもしれない」と長男に勧めてみました。
あまり乗り気ではなかったですが、なんとか登録に出かけた長男。
やはり、社内研修があることで安心したのか、登録を終えた長男は無事に、約2週間の研修期間を終えました。
その後、派遣先が紹介されるのを待つのですが、その期間が長く、社内選考でも何度も落とされることに。
「ああ、派遣社員も無理か」と、私も本人も思いはじめたころ、ようやく派遣先が決まったという知らせがきました。
それは、長男が25歳の7月のこと。
そして今、26歳になった長男はあと2ヶ月で、派遣社員として働いてから1年を迎えます。
ニートの息子が働くようになったエピソード7.長男からの告白
ニートのころはいつもイライラして理屈っぽく、くだらない理由で、5歳年下の弟に暴力をふるうことも多かった長男。
ですが、派遣社員として働くようになり、落ち着いて親子で話せるようになりました。
ある日、「あのときは、人間不信になっていった」と、私に打ち明けてくれた長男。
幼いころから、シングルマザーの私が祖父母からむごい仕打ちを受けたり。
職場でハラスメントにあったりしているのを見たり、聞いたりしたことが原因だったようです。
長男は私が対人関係で苦しんでいる様子を見て、辛かったと言います。
長男が大学2年のころ、私と祖父母の関係はさらに悪化。
それを見聞きしているうちに人間不信がひどくなって、外へ出ることが苦痛になり、大学を辞めるしかなかったみたいです。
「私が与えた生育環境のせいだ」と、申し訳ない気持ちになり、長男に謝りました。
そんな私に長男は、「子育てに正解はない」となぐさめてくれたのです。
今でも家族以外の人間とは、かなり距離を置いた付き合いしかできない長男。
しかしそれでも、家以外の心地よい居場所や信頼できる誰かに出会って、「人間不信を克服してほしい」と願っています。
まとめ
親子で辛い時期が続きましたが、耐えることと、希望を捨てないことで、なんとか乗り越えられた気がします。
ニートの期間があったことは、人生において不利なことが多いです。
けれども、「長男の心の問題を理解するためには、必要な期間だった」と思っています。
「私の体験談が、ニートでお悩みのご家族の参考になれば」と願ってやみません。