幼少期に自閉症(現在で言うところのアスペルガー症候群)と診断される。当時は世間にこの病気が認知されていなかったこともあり、小中学校といじめに苦しんだ。高校で地元を離れたのをきっかけに学校の成績が上昇し、国立大学へ進学したことで就職の道が開ける。総合病院に一般枠で就職し、月に1度の当直業務もこなしながら現在まで勤務を続けている。
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アスペルガーの私が就職活動で注意した点1:自分の長所を素直に表現する
私は他県の大きな病院でこの病気と診断されましたが、当時この病気は今と違ってほとんど世間に知られていませんでした。
よって「人とコミュニケーションをとるのに苦労してしまう病気なんだ」という理解が周囲になかなか、えられませんでした。
そのため「変わり者」「ひねくれ者」というレッテルを貼られ、なにをやってもいちいち理由をつけては同級生からいじめられる、という理不尽な日々を送ってきました。
そのなかには身の危険を感じるときもありました。
「自分を主張したら◯されるかもしれない」とおびえる日々が続いたことで、高校になって地元を離れても、しばらくは自己主張ができず、過小評価されてしまうことが多かったように思います。
そこで、就職活動においてはまず、「自分の長所を素直に表現する」というのを真っ先に心がけることにしました。
自分で言うのも気はずかしいのですが、私は好奇心がおうせいで、知りたいことは人の手を借りなくても自主的にとことん調べて理解しようとする人です。
子どものころはこのせいで、先生の手をわずらわせ、授業の進行をさまたげてしまうこともありました。
授業がつまらないと勝手に教科書の先の方まで読んでしまい「先生、それ知ってる〜」とはなしの腰をおってしまう子どもでした。
社会人としてはむしろ、この性格は長所になりうると思いました。
履歴書でも、また面接でも、それをそのまま主張しました。
自分の思いをそのまま主張したことで、ありがちな面接のやり取りに終始することなく、結果的に有利になったように思います。
アスペルガーの私が就職活動の注意した点2:自分の短所も素直に表現する
アスペルガー症候群の症状の1つに、「複数のことを同時におこなうのが苦手」というのがあります。
1つのことに固執してしまい、周囲の空気が読めなくなりがちだからです。
職場としては、あれもこれもかけもちしてくれる人材の方が使い勝手はいいのかもしれません。
しかし、そういうふうに見栄を張って採用されたとしても、どのみちあとで苦労することになるので「私は多くの仕事を同時にできる人間ではありませんが、1つずつ着実に頑張る人間です」とアピールしました。
自分で自分の性格がきちんと表現できないことには、就職以前の問題でしょう。
でもこの病気はまさに、そういうことを他人に向かって表現すること自体がむずかしい病気ですので、親や親しい友人に面接官役をお願いして面接の練習をしました。
要領は悪くても回数を重ねればじょじょに慣れてきて、本番ではなんとかうまく行ったように思います。
アスペルガーの私が就職活動の注意した点3:「できそうな仕事」を的確に探す
私の場合、病院を希望したというのが正解だったと思います。
職場柄この病気に対する一定の理解がありましたし、病院という職場は意外に、いろいろなタイプの仕事があるものです。
今の職場では、対人能力が求められる受付窓口ではなく、パソコンに向かって決まった内容をデータ入力するタイプの仕事(レセプト、健診結果表作成など)を中心にさせてもらっています。
当直(救急外来での会計計算など)もそれなりにこなしています。
これがたとえば、営業中心の会社とかだったらまず採用なかったでしょうし、、まちがって採用されても続けられなかったと思うので、「自分にできそうな仕事を考える」というのはかなり重要だと思います。
どんな仕事が向いているのか?というのは、ひとりで考えるとどうしても考えにかたよりが出がちですので、周囲の信頼できる人の意見を聞くことも大事でしょう。
アスペルガー症候群は「はなしの行間を読むのが苦手」ですので、この病気のことや患者さんの気持ちをよく知っている人でないと的外れのアドバイスにしかなりませんし、げんがいのニュアンス(嫌味やねたみなど)を患者さん自身が察知できず、まちがった判断をしてしまうおそれもあります。
中途半端に仲の良い人からの意見はえてして、そうなりがちですので、私は親と親友以外の意見はあまり聞かないようにしました。
ただ、私の時代にはまだなかったのですが、今の時代ならプロの就活サービスにお金を払って意見を聞くというのも「あり」だと思います。
アスペルガーの私が就職活動の注意した点4:「こんな自分だからこそ、できることがあるのでは」という気持ちを持つ
アスペルガー症候群は対人関係がうまくいかないがゆえに、「自分なんてこの世にいなくても、だれもなにも困らないんじゃないかな」「自分は迷惑かけっぱなしだから、いない方がみんな喜ぶんじゃないかな」と思ってしまうことがあるものです。
実際、私も子どものころ、なんどか自ら命を絶とうとしましたが「こんな自分だからこそ、生きる意味を見いだせなくて悩んでいる人の気持ちが実感として理解できるかもしれない」と思うようになりました。
毎日が社交的で楽しい人が「自ら命を絶ってはいけない」と言ったところで「きれいごと」にしか聞こえなかったりします。
実際につらい思いや、さびしい思いをして自ら命を絶とうとした人が「自ら命を放棄してはいけない」を言えば、これから命を絶とうとした人にとっては心に響くと思うのです。
そこで、面接のときも「子どものころにいじめにあってつらかったし、私自身も病気で通院したことがあるので、病気でつらい思いをしている人の気持ちは少しはわかるような気がするし、わかろうという努力を今後も続けていきたいです」と表明しました。
まとめ
「アスペルガー症候群は働きづらい」と思われがちですが、今やこの病気は「日本人の0.8〜1%程度いる」と言われており、私のように普通に働けている人も多いはずです。
私はあえて一般枠にこだわりましたが、障害者枠も含めるともっと就職のまぐちはあると思いますので、就活をされている方はどうかあきらめないでください。