29歳女性。現在、0歳児の育児に追われる子育て専業主婦。7歳ころからアトピーを発症、思春期をへて一旦、小康状態へ。その後、社会人となり不摂生がたたり、成人アトピー患者へと進化をとげる。現在は、薬と上手く付き合いながら、小康状態を保っている。
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アトピーのために辛かったこと1.見た目で恋愛対象外
アトピー患者にとって、恋愛に対してのハードルは、とても高いものです。
中学生のころは、とくに症状がひどく、顔や手足など服で隠れない部分にも、アトピーによるかきむしった傷ができていました。
アトピーであることがコンプレックスで、好きな人ができたものの、自分の思いを告げられずにいました。
中学2年生のバレンタインデー、キラキラと輝く周りの女子たちに触発された私。
思い切って告白してみようと、手づくりのチョコレートをつくりました。
「受け取ってくれるだろうか」と、不安でしたが、思いを伝えずにはいられませんでした。
直接伝えるのが恥ずかしく、友人を伝って、「放課後の教室で待っていてほしい」と、伝えてもらいました。
ドキドキしながら、彼が来るのを待ち続けていました。
10分、20分、30分。
とっくに、下校時刻がすぎたころに、私はやっと悟ったのです。
彼は待っても来ないと。
当時は、携帯電話なんて持っていない時代。
力の抜けてしまった体を動かし、あふれ出そうな涙を必死に溜めながら、教室をあとにしました。
次の日に、学校へ行くと、騒がしい教室の前で思わず足が止まりました。
「申しわけないけど、見た目だけで恋愛対象外だわ」の声。
世界一、大好きだった人の声で、世界一、残酷な言葉が頭を突き抜けました。
その言葉を聞いただけで、もう十分わかりました。
どう見ても、普通の見た目じゃない私は、思いを伝える権利もないのだと痛感しました。
自分がみじめで、悔しくて、やっぱり恋愛なんてしてはいけないのだと、ひどく落ち込んだのを今でも覚えています。
アトピーのために辛かったこと2.全身がかゆくて眠れない
アトピーではない人にとっては、「かゆくて眠れないとは、一体どういうことだろう」と、不思議だと思います。
学校や仕事などの、日常生活を送っているあいだは、かゆみが襲ってきても、どうにか耐えられます。
就寝前には、気持ちがホッとしてしまうのか、1日のかゆみを凝縮したような、猛烈なかゆみが身体を襲います。
かいてはいけないと思えば思うほど、体をかきむしる手は止まらなくなります。
ひとしきり、かきおわったあと、真っ赤になった体や、かいてしまったことへの罪悪感から、なんともいえない感情におちいります。
「またやってしまった、どうして我慢できないのか」と、後悔の嵐。
そのうち、かゆみとはまた違った、かいた部分が熱を持って、うずく感覚が押し寄せてきます。
これが原因で、眠ることができなくなるのです。
かかなくても、かゆくて眠れない。
かいたら、傷がうずいて眠れない。
どうしようと、眠れないに変わりはありません。
そんなときには、冷凍庫から保冷剤を取り出し、幹部にあてながら眠ります。
少しだけ、かゆみが和らいで、その隙になんとか夢のなかへ滑り込むのです。
アトピーに、睡眠不足は大敵なので、なんとか睡眠を取ろうとした結果、こういった方法にたどり着きました。
アトピーのために辛かったこと3.好きな服が着られない
アトピー患者にとって嫌な季節、夏。
いろいろな服を着てみたい年ごろになると、アトピーであるがゆえに、着ることができない服が多いことに落胆しました。
この服は、肘から上が隠れるから大丈夫かなとか、ノースリーブは傷が丸見えになるから嫌だとか。
そんなことを思いながら、服を選ぶのはまったく楽しくありませんでした。
ショッピングに行っても、無意識に傷跡で判断してしまうので、あきらめてしまった服はたくさんあります。
ある年の夏、友人に遊びに誘われた行先は、なんと海。
半袖を着ることさえ迷う私に、水着になって海で泳ぐことなど拷問に近いことなのです。
なんとか理由をつけて、断ろうとするも断り切れず、拷問の地へ向かうことに。
全身ラッシュガードを着て、肌の見える部分は顔と手と足先のみ。
この状態にならないと、とてもじゃないけど海へは入れません。
傷跡を見られたくない以前に、海水が体中にしみるため、なるべく海水が触れないようにするしかありませんでした。
せっかく、みんなで海に来たにも関わらず、全身タイツのような私を変な目で見るのは、同性の友人のほうでした。
「なんでそんな恰好なの?せっかく海に来たのに」と、なに気ない一言だけど、私には辛すぎる言葉でした。
本当は、みんなと同じように水着を着て泳ぎたい。
そんなことを思いながら、当時17歳の私は、全身タイツで人ごみにまぎれ、はしゃいだフリをしていたのでした。
アトピーのために辛かったこと4.根拠のない民間療法に引っかかる
アトピー歴が長くなってくると、一度はステロイド(塗り薬)について疑問を持つ人は、多いのではないでしょうか。
私もそのひとりで、薬を塗っているあいだはいいのですが、塗るのをやめればかゆくなります。
ネットで「アトピー、治療」などと検索すると、サプリメントや水、入浴剤など選択肢は山ほど出てきます。
負のループから脱却したい私は、怪しげな浄水器のサイトへたどり着いたのでした。
「水道水に含まれる○○が、アトピーの原因!」という、宣伝。
はじめて目にしたときは、まさに目からうろこでした。
意気揚々と、その浄水器を購入しました。
当時、社会人になりたてで、少ないお給料のなかからローンを組んで、まるで宝物のように大事に使った浄水器。
そのローンをおえるころになっても、以前となにも変わらない。
むしろ、塗り薬をやめたことにより、さらにひどい状態になった自分の体を見て、思わず泣き崩れました。
なにを信じれば良いのか、わからなくなっていました。
結局、その状態に耐えきれず再び病院に駆け込み、薬漬けになる日々を送ることになりました。
でも、それと引きかえに、心の平穏は手に入れることができたのでした。
まとめ
アトピーであるがゆえに、辛い思いをしたこと、なにかを諦めたこと、数えきれないほどありました。
ただ、うまくいかない理由をすべてアトピーのせいにしていると、なにもかもが悲観的に思えてくるのです。
辛い思いをしてきたからこそ、決して卑屈にならず、温かい心を忘れないようにしていきたいものです。