35歳男性。栃木県出身。
栃木県での中学校の教諭を経て、現在は、東京都内のIT企業で働いています。
大学時代に、短期間だけ、難病を患っていた女性の同級生と付き合っていた。
彼女は、30分歩くだけでも、息が切れてしまうほど、病弱。
将来展望の会話をしても、ひどく厭世的なことしか言わなかったことが、印象に強く残っています。
趣味は、ロードサイクリングと読書と株式投資。
見出し
病弱の彼女と付き合ったエピソード1.大学の講義で知り合った
彼女とは、大学の講義で知り合いました。
彼女はいつも、最前列で講義を聞いていたのですが、いつも疲れている様子。
講義が終わると、そのままうつ伏せになって、目を閉じているときもありました。
そんな彼女に、誰も声をかける様子がありません。
なので、私がたまりかねて「大丈夫ですか? 体の具合が悪いのですか?」と、声をかけたのです。
それが、私たちが知り合ったきっかけでした。
彼女は弱々しい声で、「ありがとうございます。少し休めば大丈夫です」とだけ答えます。
男性の私がそばにいるにもかかわらず、再び机の上にうつ伏せになって、目を閉じるのです。
男性を警戒する気持ちの余裕がないほど、日常的に体調が悪かったのでしょうね。
そのとき、「なんらかの病気と闘病中なのかもしれない」と、直感的に感じました。
そのときは、すぐに彼女のそばから離れて、立ち去った私。
しかし、それからも講義で顔を合わせるたびに、「こんにちは」とか「今日は、体調良さそうですね」などと、声をかけるようにしました。
なぜなら、彼女のことが心配だったからです。
彼女は私が声をかけるたびに、律儀にお辞儀してくれましたが、声は細く、声量も乏しい状態。
私たちが付き合うことになったのは、いつものように、講義が終わったあとのことです。
彼女が机の上にうつ伏せになっていたのですが、いつまでたっても、顔を起こそうとしません。
私が驚いて、「大丈夫ですか?」と、彼女の体を揺さぶったのです。
彼女は眠りから覚めたかのように、顔をあげて「ありがとうございます」と返事をします。
そして、彼女は「もう帰宅したい」と言いました。
なので、私は彼女を彼女のアパートまで、送っていくことにしたのです。
昼間の14時ぐらいだったと思います。
大学からは歩いて、10分程度の近い場所のアパートでしたが、彼女はときおり「ハア、ハア」と、息切れしているようでした。
彼女をアパートに送り届けると、彼女はこう言ったのです。
「ありがとうございました。また助けてくださいね」と。
それに対し、「もちろんだよ。心配しなくていいよ」と返事する私。
それが、付き合いはじめるきっかけとなったのです。
病弱の彼女と付き合ったエピソード2.疲れやすい体質の持ち主だった
彼女と付き合うようになり、毎日のように、私は彼女のアパートに出向きました。
大学から付き添って、彼女をアパートに送り届けましたし、スーパーの買い物にも付き添います。
このため、付き合うといっても、男女の関係はほとんど持たなかったのです。
彼女は難病を患っていました。
そのため、運動をすることはできません。
なぜなら、すぐに息が切れてしまうからです。
30分間歩くだけでも、息が切れて「ハアハア」と辛そうに呼吸をし、顔をゆがめてしまうほど。
彼女によると、高校在学中に手術を受ける予定があったそうです。
ですが、手術前の検査の一環で、肺活量の検査を何回か受けたところ、医師からこう判断されたようでした。
「全身麻酔の手術には、耐えられない」と。
私は、全身麻酔の手術を受ける場合に、最低限必要な肺活量というものが存在することをはじめて知りました。
「なんとか肺活量を増やしたくて、『ジョギングをしよう』と思ったこともあったけど、すぐに転んじゃってダメなのよ」
彼女は、悲しげにそう言っていましたね。
私が「少しずつ歩く距離を増やしていけば、なんとか肺活量を増やせるんじゃないの?」とアドバイスします。
すると、彼女は小さい声で、こう答えるのでした。
「そうね。やってみる価値あるよね」と。
手術を受けることができない体の状態が続くということは、深刻なことです。
なぜなら、今後、さらに年齢を重ねて、将来重病に罹患してしまった場合、彼女が助かる可能性は低くなるからです。
私は、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がして、悲しい気持ちになりました。
病弱の彼女と付き合ったエピソード3.将来の話をしても、なにも展望を描けていないようだった
おたがい大学生ですから、彼女とは、将来の話などもしました。
私は、「教員免許をとったら、地元の中学に戻って教師をしたい」と、彼女に話します。
しかし、彼女は「私に夢はないわ」と言うのです。
おまけに「いつまでも私と付き合ってると、あなたも不幸になるわよ」などと言います。
私が驚いて、彼女に言ったのです。
「どうして付き合い続けると、俺が不幸になるんだよ。そんなわけないだろ」と。
すると、彼女は「陰気って、他人に移るのよ」と言うのでした。
私はそれ以上、言い返す気持ちにもなれず、黙ってしまいましたね。
しかし、一呼吸おいて「そうは言っても、教員免許を取りたいから、ウチの大学に入学したんじゃないの?」と、尋ねた私。
すると、彼女は「うん。夢だったから。けど夢は夢でしかないかも」と、つぶやくのでした。
まとめ
結局、私たちが付き合った期間は、ほんのわずかでした。
そして、彼女は教員免許を取得することなく、大学を中途退学。
大学生活を続けられるだけの体力が、彼女にはなかったのです。
いま振り返っても、「短期間で彼女と別れてしまったことは、薄情な振る舞いだったのかな」と考えてしまいます。